勝利の笑み、会心の笑みと現在水端秋穂の顔に浮かんでいる表情を表現するのは至極簡単であろう。それほどまでに、ニンマリしている。敢えて言うなら戦況が作戦通りに進んだ戦略家の笑いとでも言うべきだろうか。
自信タップリの目線で秋穂は一同を見渡した。
篠原喜美子山根千鶴佐藤美保の三人に秋穂を加えた四人がいつものグループである。
三人の興味は秋穂の持つ、片耳に小さなリボンをつけた子猫がデザインされた二つ一組の小さなプラスチック製の箱に注がれていた。
「むっふっふっ、勝ちは貰ったわ。」
秋穂が箱の蓋を開けると一同が驚きの声をあげる。
昼休みに木陰で友人達と弁当を広げるという風景はあまりにもありふれている。
だが一つだけ珍しい現象がそこに起きていた。
水端秋穂が手製の弁当を持ってきていたのだ。誠に些細でささやかな珍現象ではあるが四人にとっては一大珍事であった。
昨日、些細な話から「秋穂は家事が苦手」という事がやり玉に上げられ、紆余曲折の末に「明日、秋穂がお弁当を作ってくる」という話になった。
生来の負けず嫌いから秋穂が「いいわよ」と受けて立ち、公約が成立した。そして、今秋穂の勝利を確信した笑みが周囲にバラ巻かれているわけである。
「オーッホッホッホッ、ワタクシが本気を出せばざっとこんなものでしてよ。」
今時、どんなお嬢様もしないような高笑いをする秋穂。正に、鼻高々である。
「これ、ホントに秋穂が作ったの?」
千鶴が疑わしそうに訊いた。
「秋穂のお母さんじゃないよね。そうだったら、いつも何か変なの入れているし。」
「秋穂は一人っ子だから、姉妹の誰かってワケじゃないし。」
三人が三人共、端から秋穂が作ったと信じていないようであった。
「だから、アタシが作ったんだってばっ」
「ねえねぇ、秋穂。」
色ばむ秋穂の袖を今まで黙っていた美保が引っ張った。四人の中で一番のんびりしていて、家庭的な娘である。家庭的------料理も上手いのだ。
「何?」
「これどうやって作ったの?」
「それは------」
おかずの一品について訊かれた秋穂が作り方を説明する。調味料の単位まで入っている妙に詳しい説明であった。
他の二人もその説明に耳を傾けている。理論武装は完璧であった。
「でも、それじゃ違うものになっちゃうよ。これ。」
「え゛っ」
秋穂の説明を一通り聞いた美保がのんびりした口調で言った途端、秋穂の顔が硬直した。
”百聞は一見に如かず”経験者の言葉は何よりも重い。喜美子と千鶴の疑いの目が秋穂に集中する。
「どういう事かな~?秋穂ちゃん?」
喜美子がジリッとにじり寄る。
「みみみ美保が間違えたんじゃない?きっとそうよ。」
「ん~、あれは私も何度か失敗して覚えたから、間違えるって事はないよ~」
この場にあっても美保の声はのんびりしていた。
理論で固めた鎧の土手っ腹に風穴を開けられた秋穂はついに観念した。
「はいはい、そーですよ。お察しの通り、このお弁当作ったのはアタシぢゃありません。」
ため息をつく秋穂。気分は自白直後の犯人であった。
「まぁ、そんなトコだとは思ったけどね。で、誰にお願いしたの?」
「晃ちゃん。」
四人の間に妙に乾いた風が吹いたようであった。
「誰?晃ちゃんって?」
「晃ちゃんは晃ちゃんよ。四神晃一郎。」
またも風が吹いた。
「えぇーっ!?」
一瞬の後、秋穂以外の三人が揃って声をあげる。青天の霹靂であった。
「四神晃一郎って、この前転校してきた?」
「うん」
「男だよね?」
「うん」
「全面的にお願いしちゃったワケ?」
「うん」
「秋穂がやったのって、レシピの暗記とか?」
「うん」
珍妙な問答がひとしきり終わると、三人の顔に何とも複雑な表情が浮かんでいた。秋穂がキョトンとして「どしたの?」と訊く。
いきなり千鶴が吹き出した。四神がエプロンを付けて調理している姿を思い浮かべでもしたのだろう。
無愛想という訳ではないが、寡黙なイメージがクラスには定着しつつあったので、そのギャップはかなりのものであった。
「なによぅ、晃ちゃんは昔からこーゆーの得意だったんだから。」
「お弁当がおいしいのは認めるわ。でもねぇ・・・」
喜美子も笑いながら肯定すし、頭に浮かぶイメージに口を歪ませる。
「四神君て、カッコいいからそのギャップが凄いよね~。」
その一言で場が硬直した。発言者は美保である。
「カッコいい~?」
秋穂が変な顔で訊き返す。
「え?あ、うん・・・ホラ、ワイルドっていうか・・・」
「ワイルド~?」
秋穂の顔がさらに変になる。
「美保は知らないと思うけど、晃ちゃんってすっごい泣き虫で小学校に入るまで、アタシの後ろに隠れてたんだよ。それが・・・ワイルド~?あんた目と頭大丈夫?」
ヒラヒラと美保の顔の前で手を振るう。
「大丈夫だよ~」
「まぁまぁ、昔はどうあれ今はイイって事でしょ?美保。」
「う、うん・・・」
「男に興味ないと思っていた美保が、そう言うなら応援しないとね~。」
「別に・・・そんなんじゃないってば・・・」
美保をからかう他二人の会話を聞きながら、秋穂は幼い頃からのイメージと美保のイメージとのギャップに納得が出来ないでいた。
------今日は開店しないんですか?
------この前みたく舐めてくれよ、あんなに旨そうにしてたじゃないか。
------一万、いや三万出すから、本番させてくれよ。
岬沙耶は自分の唇を差し貫く視線にそのような意図を感じた。無論、彼女の想像である。が、視線の送り主達の顔を見ればそれが当たらずも遠からずという事が解るだろう。
彼女が私立蘭靖学園高等部に赴任して二年になる。
着任早々、その美貌と学生時代にスポーツで磨かれたプロポーションで人気を呼んだ。休み時間や放課後には、質問をしにくる生徒が絶えなかった。すれ違うと振り返って、後ろ姿をじっと眺める生徒もいた。
それは、二年目になっても頻度が落ちたとはいえ変わらなかった。さしたる対抗馬もなく、沙耶はほんの少し女王様の気分になっていた。
それが、災いしたのかもしれない。日曜の晩に、ややアルコールを取りすぎた脳は彼女にミニスカートで出勤する事を命じた。
”たまにはサービスしてあげようかしら”そんな気の緩みにも似た意識があったのかもしれない。
”サービス”という言葉通り、彼女は生徒のみならず同僚の教師達の視線を総取りにした。
そして、その報酬はレイプであった。
彼女のムッチリといい具合に脂肪の乗った太ももに触発された突発的なものか、計画的なものかは解らないがレイプされた。
陵辱者は三人いた。教師間では要注意とされている、いわゆる不良であった。
当直で戸締まりを確認していた沙耶を問答無用で押し倒すと、彼らは服を剥ぎ取り、その女の要素を満載した身体に舌を這わせ、指で弄り、若さに溢れた精汁を注ぎ込んだ。
寧猛な男達は息をつく暇もない程の激しさで沙耶の性器と結合した腰を振りながら、官能を掘り起こされ、よがり泣く女教師の痴態をカメラにビデオに納めていった。
翌日から、沙耶は不良達に隷従する事を余儀なくされた。
休み時間や昼休みでも彼らに命令されれば、尻を差しだし、肉棒から白濁を吸い取る。休み時間での奉仕で官能に火照った顔をしかめつつ、性器から注ぎ込まれた精液がこぼれないように括約筋に力を込め授業をした事も度々あった。
手を変え場所を変え、美教師の身体を貪り尽くすと彼らは彼女に客を取らせる事を思いついた。
一日おきに行う生徒相手のリップサービスは多い時に二十人以上の客が入った。
面白い事に客の顔ぶれが大きく変わることはなかった。紹介された生徒達が客が増える事を望まなかったからだ。
欲望にギラつく生徒達の男根から精液を吸い出し、三人の主人達に豊満な身体をなぶられる。そんな事が女教師の日常に組み込まれていった。
しかし、唐突に終わりが訪れる。
客達の精液を浴び、不良達に犯されている最中に現れた四神と名乗る転校生が三人をぶちのめし、病院送りにした。
沙耶は、次はこの生徒が主人になるのかと陵辱で霞んだ頭で考えたがそれきり四神は接触してこなかった。
思わぬ事で、陵辱の檻から解放されたかのようであったが、数ヶ月に及ぶ淫行は女教師の身体に楔を打ち込んでいた。
休み時間や昼休み、今まで尻を貫かれ、男根を吸っていた時間になると、口中に熱い肉の味が蘇り、秘唇がぬめりを覚える。男達への奉仕が習性となってしまっているのだ。
加えて、口唇奉仕の客となった生徒達の情欲を孕んだ視線が沙耶の肢体をなめ回した。
------いくら難しい事を言っても、その口で俺のチンポを舐めたんだぜ、先生。
授業中そんな声が聞こえてきそうであった。
人気のない教室にでも連れ込まれ、舐めろ、脚を開け、と命令されたなら従うに違いない。女教師は欲望にたぎる何本もの男根にむしゃぶりつく己の姿を妄想していた。
その妄想が現実のものとならなかったのは、不良達が病院送りになった、という事実によるものであった。
関わり合うのはまずい。暴力で他者を威圧する彼らが入院に追いやられる程の別の暴力が介入した事で今一度、美教師に奉仕させる願望は放棄されたのである。
しかし、未練は残り人知れず淫らな妄想を抱く女教師を視姦し続けていた。
沙耶は、授業が終わると絡みつく視線を振り切るように教室を出た。その足で第二指導室に向かう。途中、何人かの客として見知った顔とすれ違ったが彼らもやはり、ねちっこい視線を送るだけで何も言ってこなかった。
指導室に入ると、淀んだ空気が鼻をついた。殆ど使われていない証拠である。
照明のスイッチを入れ、締め切られたカーテンをそのままに、スチール製の事務机とセットで置かれている椅子に腰を降ろし、ため息をつく。
「ふぅ・・・ぅんん。」
やけに甘いため息であった。
パックリと開いた股間に手が伸びた。これも習慣となって着用しているミニのタイトスカートの下、ムッチリとした太モモの付け根に走るのは黒のTバックパンティである。指がその細い紐布の下に潜り込み、淫靡に動き始めた。
最初は声を漏らさぬよう、控えめに肉芽や秘唇を弄ぐっていたが徐々に「アフゥ、アフン」と鼻を鳴らし始めた。やがて、もう片方の手を添え、十本の指を駆使しての自慰を開始した。
身体を思い切り反らし、歓喜の入り交じった細かい苦鳴を漏らす。その激しい指使いは、慰めるというより責めさいなむと言った方が正しいような動きであった。
一際高い悲鳴を噛み殺し、絶頂を迎え惚けたようになったあとも片方の手で陰唇を緩やかに弄らっていた。
心地よい疲労感が去り、熱い息を吐き出すと、沙耶は身体の奥にまだくすぶる肉悦への渇望を感じ取った。イキきらなかったのだ。
三人の陵辱魔から解放されて以来、沙耶はこのくすぶりを感じ続けていた。
最早、自慰などで満足できる身体ではなくなってしまったのだろう。
沙耶は机に突っ伏しながら、今一度及ばないながらも快楽を得ようと秘唇に両手を添えた時、声をかける者がいた。
「用ってのは、オナニーショーの招待ですか?」
どのようにして音も立てずに入って来たものか、四神晃一郎は自慰に耽る女教師をつまらなそうに見下ろしていた。

抜ける官能小説
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