夜は怖い。いや、夜ではなく暗闇が怖いのだ。目を閉じて、真っ暗な世界に身を投じると、二度とは戻ってこれなくなりそうな気がする。
だが、いかに恐ろしくても、眠らぬよう努力しても、いつかは眠りに落ちる事を免れない。ならば、早く目を覚ますのがいい。出来るだけ早く目を覚ますのだ。それならば、不眠を続け不意に眠りの底に墜ちる事よりもずっと良い。
どれほど眠っただろうか。猛烈な勢いで身体を起こした。
皮膚の下をザワザワとミミズが這い回る嫌な感覚が急速に引いていく。
カーテンが白く透けている。朝のようだ。
両の手のひらを凝視した。変わりはない。手首を回しながら、握ったり開いたりを繰り返してみる。これも変わりはない。思い通りに動く。
無事に夜を越えたようだ。
だが、解っていた。解るというより感じていた。
容器の中の水に墨を一滴垂らすと、墨は水と解け合い判別不能になる。水の割合が多ければ、多少の濁りはあっても水でいられる。だが、次々Tと墨が落ちてくれば、何時かは墨に変化してしまう。その何時は、水を入れた容器の大きさにもよるだろう。確実なのはその一滴毎に些細な差とはいえ、以前の状態ではなくなるということだけである。
それと同じように、同じ形状、同じ意識を保ちながら変わっていく自己を感じ取っていた。
”鈴川清音”クセのない長い髪を振るわせ転校生はそう黒板に記した。
振り向くその貌に男子生徒の視線が集中する。
もの憂げな瞳、やや高い鼻、少々厚めだがそれが逆に可愛らしさを強調する唇。
バランスよく各部品が輪郭に収まっている。
「よろしくお願いします。」
よく通る声が流れ、鈴川清音はクラス中の男の視線を釘付けにする美貌をペコリと下げた。
担任に席を教えられ、そこに着席するまでの道中も視線が清音を追いかけた。首を動かさずに目だけで追う者、あからさまに振り返る者、多種多様である。その中で一際熱い眼差しを送っていたのは、HR担任教師------堀川正信であった。
席に着く美少女から目を離し、堀川は自分にロリコンの気でもあったかと心の中で苦笑した。
授業が終わり、職員室に戻ってからも堀川の頭から鈴川清音の事が離れなかった。
何故これほど気にかかるのか、どう考えても不可解であった。
確かに、可愛らしい顔立ちをしている。身体もバランスが取れている。声もよく通る澄んだいい声だ。テレビで活躍しているそこいらの子役タレントを軽く足蹴にできるだろう。
だが、堀川の嗜好に則してはいなかった。
堀川は今年三十六歳になる。妻は三十だ。年齢的に少々肉がついてきているが、元々堀川は太めが好みであった為今が丁度良い時期であった。脂肪の乗った雄大さすら漂わせる白い尻肉を両手で鷲掴みにし、左右に割り開いて奥で息づく秘唇に己の剛直を突き刺した時、手に伝わる妻の反応が堪らない。激しいピストン運動で生じる肉のはたきあう音や腰に叩き付けられる尻の感触は頭が空っぽになる程に良い。たまに風俗に行ってもボッチャリした娘を選ぶ。近間の女でいえば、同僚の雛村杏子だろうか。最近になって何かと話題にのぼる、あの豊かな胸は確かに揉み心地が良さそうであった。
鈴川清音がいかに美少女であっても、肉体に基準を置く堀川の範囲外のはずであった。
しかし、気になった。理由は解らずじまいだった。
その日、担当の世界史で再び鈴川清音を目にしていくらか疑問が解消された。
気になる、という代物ではなかったのだ。感じるのだ。下世話な言い方をすれば股間にくる、欲情するという事である。
毎晩のように尻を貫き精液を注ぎ込んでいる妻と比べれば、貧弱とも言える胸や尻。スカートに隠れてはいるが発展途上の脚は贅肉一つない。感触的に面白くないだろう。いかに美しくても肉を知る者を表面だけで興奮させるのは至難の技なのだ。
それが、股間に血液が集まるのを感じていた。ドクンドクンと脈打っている。教壇で隠しているからいいものの、見られたら大騒ぎだ。
生徒に解らぬよう、呼吸を整え猛りを鎮めようとする堀川はまた新たな疑問を抱いた。”気になる”というのが発情の初期段階であったのは解ったが、では何故、発情するのか。結局の所、根本的な疑問は解決されていなかったようだ。
(どうやって犯るか。)授業を終え、なんとか股間を鎮めて職員室に帰った堀川はすでに疑問を解消しようという気は捨てていた。変わりに、解消の方向性を変えた。つまりは欲情の発散、レイプしようというのだ。標的はもちろん鈴川清音であった。
数年前、堀川は以前いた学校でもそれをやっていた。常習犯という訳ではない。
三月にすでにここ、蘭靖学園への異動が決まっていたので行き掛けの駄賃という感じであった。終業式の翌日、堀川の送別会をするという名目で担任していたクラスの中で目を付けていた女生徒達を学校に集め、そこでレイプした。上層部には大目玉を食らったが、初犯という事で厳重注意に止まり、今に至っている。
(もぅ、4年も経っているし、一人位ならいいだろう。)堀川の脳裏と股間にあの時の興奮が蘇ってきた。
泣き叫ぶ女生徒達をロープで数珠繋ぎに縛りつけ、次々と犯していったのだ。こいつはオマンコ、こいつはアナルと役割分担を決め一突きすると次の生徒に行く。
セックスのバイキングのようなものであった。
興奮のために乾いた唇を一舐めする。
相手が一人ならば、ねちっこく責めてやるのがいいだろう。未開通のオボコ娘なら性器の襞を引き延ばして羞恥の鳴き声を叫ばせるのもいい。既に男を知っていたなら、バックから犯しながら肛門の皺の数を数え上げてやる。飽きるまでやったあとは・・・・。
堀川は口中にたまった唾を飲み込み、ニヤリと笑った。
これほどまでに簡単にいっていいのだろうか、と堀川はいぶかしんだ。
だが、今腕の中から漂う少女の体臭にささやかな疑問は吹き飛ばされてしまう。
時刻は午後十一字五十分過ぎ。もう少しで明日になる。
場所は鈴川清音が住んでいるというマンションの駐車場であった。地下駐車場ではなく、マンションの隣の敷地を使っている。辺りに人影はない。
数時間前、車で帰路についた堀川は夜の帳も降りて暗くなった道を一人行く清音を見つけると、車を寄せ声をかけた。
どうやら、迎えに来る筈の親が急用でこれなくなったらしい。
堀川は当然チャンスは逃さぬため、送っていくと申しでると、清音も「お世話になります」と頭を下げた。
成り行き上、近くのファミレスで食事を取り、マンションの駐車場に車を入れるとこの時刻になっていた。
「先生・・・」
堀川がエンジンを止め、さてどうするかと考えたその時、清音の手が堀川の胸元に触れた。
驚く堀川の眼と清音の熱を帯びた眼が絡まった。
「おいおい、まさか援助交際しようなんていうんじゃないだろうな?」
驚いたように言う堀川はしかし、しめたと心の中でほくそえんでいた。
「だめ?」
清音の指が胸の上でのの字を書いている。微妙な刺激が心地よい。
「このヤリマンめっ」
ここで堀川は賭けに出た。この侮蔑の言葉にどう反応するか?それによって今後の対応を変えなくてはならない。
「ヤリマンだなんて・・・ひどいわ・・・」
清音の鈴が鳴るような声に堀川の口元がつり上がった。
当たりであった。声のイントネーションから媚びているのが解る。
こいつは、ガキのクセにアクメを覚えて忘れられなくなっちまったち違いなねぇ。
ガキのセクしやがって、チンポを喰わえ込んでヨガりまくったんだ。ガキのクセに。
爆発しそうな情欲をなんとか押さえ、堀川は努めて冷静な声を出した。
「ホテルでも行くか?」
「・・・ここでして。」
------!?今度こそ、堀川の理性のたがが外れ飛んだ。
転がり出るかのように車外に出ると、助手席側に周り、清音を引きずり出すかのように引き出した。
勢い余って、アスファルトの上に清音が転がった。堀川が叫びを上げてその上にのしかかる。
「お前が、してと言ったんだぞ。してってな、このエロガキめっ!」
興奮の為か手が震え、上手く制服を脱がすことが出来ないとなると、力任せに引き裂いていった。
いい年の、さらに妻子持ちの男とは思えないガッツきぶりであった。おあずけを喰らい続けた目の前のエサにようやくありついた犬のようだ。
実際、そうだったのかも知れなかった。清音を車に乗せてから、堀川は股間に沸き上がる欲望を感じていた。
それは時間が経つにつれ、次第に大きくなり抑える苦労していた。それが限界にまで高まった時、清音の一言で爆発したのである。
「ああん、いやぁ・・ん」
獣のようにむしゃぶりつく堀川を清音は嬌声を以て迎えた。
「ん・・・うぅん、あぁん。」
幼さを含んだくぐもった熱い声が流れている。
鈴川清音は、クラウンのボンネットの上に腰掛けた堀川と座位で結ながり腰を振りたくっていた。
清音の未発達な身体にこびりつく白濁の汚液の量がこれまでの性行為を物語っている。
「はぁ、まだ・・・まだなの・・あんンッ」
堀川の首に両の腕を巻き付けながら、清音が色っぽい声を出す。
「はやく・はやくぅ・・・もぅ・・あふぅん。」
射精を催促している。膣の中に精液を注いで、と眼に涙を溜ながらの懇願であった。
可憐とも言えるようなその姿と、己の肉棒にまとわりつき絞り上げる肉襞の動きは絶品であった。妻ではこうはいかない。
「来て・・来て・きてぇぇんっ」
声も堀川自身を締め上がるようであった。
だが、「・・・だめなの?」
清音があらい息を吐きながら訊く。
「ああ、さすがに打ち止めみたいだ。」
「そう・・・・」
苦笑する堀川の顔に清音が両手を添えた。キスでもしてくるのかと、堀川の口が笑いに歪んだ。
「おいおい・・・あぎぃっ!」
堀川の笑いは悲鳴に変わっていた。顔に添えられた清音の右手の親指が堀川の左眼に潜り込んでいたのだ。
「ごっ・・・!」
声が漏れないようにするためか、開いている左手が堀川の首を締め上げた。
「ああん、いい。膣でビクビクしているわ。」
片目を潰され、喉を締められながら堀川のモノの先ほどより一回り大きくなっていた。
酸素を求めバタつく両手が、清音の左手に触れようとした時枯れ枝を折るような音がした。
堀川が首を傾げていた。しかし、あまりにも妙な傾げかたであった。左耳が左肩にべったりとついていた。口からは赤い泡が噴き上がっている。
とたんに、堀川の身体がメチャメチャに動き出した。
「あん、あん、あふぅん・ああっ!ああーっ!」
清音が一際高い声を上げてくずおれた。イッたようである。堀川の痙攣も引き単なる肉塊と化すと静音は堀川から離れた。
クラウンの上の堀川をそのままに、堀川の車に向かっていく。
その足が止まった。
ゆっくりと振り向いた。
振り向いた先に堀川の姿はなかった。清音が飛び退くのと、頭上から何かが振ってくるのは同時であった。
卵を床に落としたような音が流れる。
「やってくれるじゃねぇか、ヤリマンがよォ」
しゃがれた声で言うのは堀川であった。膝から下、臑やふくらはぎから白いトゲのようなものが無数に生えている。着地のショックで砕けた骨が肉を突き破って顔を出しているのだ。
顔はしょぼくれたように下を向いている。清音に首をへし折られたため、持ち上がらないのだ。
「お返しはたっぷりしてやるぜ。」
堀川が上体を左右に揺すり始めた。頸椎という支えを無くした頭がゆらゆらと揺れる。
上体の揺れはは次第に激しくなった。それに伴って、頭も振り子のように揺れ動く。
さらに、遠心力が冗談の用に作用したのか首が伸び始めたのだ。
十分に伸びきった所で堀川の左手が首を掴んだ。
今度は左手でブンブンと振り回す。まるで鎖鎌の分銅であった。
いきなり左手が伸び、清音に向かって頭を投げつけた。
風を切って飛んできた頭をかわした清音は次の瞬間、もう一度身体をひねる。その傍らを堀川の頭がかすめていった。
一度はかわしたかにみえたが、いきなり堀川の頭が急角度に進路を変更し清音めがけて飛んできたのだ。眼を血走らせ、歯をむき出しにしたその顔は獣そのものであった。
「いい反射神経だなぁ、ヤリマンにゃもったいねぇぜ」
はたして、その声は何処から出ているのか。風を切る頭からでもあるようで胴体からでもあるようであった。
自らの首を握り頭を振り回す教師と全裸の女生徒、課外授業と呼ぶにはあまりにも異様な光景であった。
「さぁて、そろそろいくぜ」
上空に向かって頭を投げると同時に堀川の横にあったランサーが清音に向かって飛んできた。堀川が手首のスナップで飛ばしたのだ。とてつもない膂力であった。
アスファルトとタイヤの接点から白い煙を昇らせランサーが迫った。
間髪を入れず、横のシビック・プレリュード・ボルボが次々と発進する。
「げぇっ!」
叫びはしかし、堀川が上げたものであった。
清音の頭頂へ襲いかかった頭部に残った右眼が掲げられた清音の手を視界に納めた瞬間、堀川の頭部は熟柿の如く四散した。
それと同時に清音に向けて放ったはずの車達が堀川に向かって来た。しかも、放った時の数倍の速度を伴って。
駐車場で起こった大玉突き事故はその規模に比べて静かであった。
アスファルトとの摩擦熱で煙を上げる車体の下から堀川が這い出してきた。
その目の前に清音が立っていた。細い身体から陽炎がユラユラと立ち上っている。
清音は膝を突き、起きるのに手を貸すかのように手を堀川の左手に伸ばした。
左手は未だ首を握っている。
「や、ヤメロ!」
堅く握る左手を無理矢理引き剥がすと、そこに小さなしかし確かな顔があった。その顔が歯を剥く。
「このヤリマンがぁ・・・」
堀川の本体であった。
清音は白い繊手で、それを躊躇無く握りつぶした。
声にならない叫びと、断末魔の痙攣が堀川の身体を走り抜けた。

抜ける官能小説
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