獲物を見つけると、すぐに自分の外装をチェックした。
グレーのスーツに濃紺のネクタイ、柄が控えめなもの。髪は7・3で分け前髪に緩くウェーブを欠かけている。眼鏡は伊達だが、ちょいと目には解らない。
唇をキュッ結びそのまま、左右に動かす。10回ほど動かし、柔軟体操終了。さわやかな笑顔を造る。
設定は、お節介焼きの新人サラリーマンで行こう。
「君、ちょっといいかな。」
多少の緊張を織り交ぜた声を作り館嶋一馬は目標に声をかけた。
 湯気が立ち込めているが、視界を防ぐほどではない。浴槽の縁に腰掛けたその腰の辺りからの音が反響して、耳にイヤらしく飛び込んでくる。
チュルチュル・・ズズーッ・・・ぷはっ・・・ジュパ・・・・響く音が変わる度に変化する舌の動きは絶品であった。短い人生経験の中で初めて味わうものであった。
「く、このメスガキが。」
館嶋は、口を割りそうになるよがり声を必死にこらえ、悪態をついた。
今、館島の股間に顔を埋めているメスガキの名は「静音」といった。名前を訊いた館嶋に短くそう答えたのだ。名字は言わない。
会話を進めている内に、ラブホテルの浴室でこうなっている。すでにベッドの上で2回、鈴音の身体に精液をぶちまけていた。
静音の身体は取りたてて評価するほどのものではなかった。15歳という年齢に則した発展途上の身体である。調達係りとして数多くの女の身体を見てきた館嶋の目にも欲望をそそる対象にはならなかった。
だが、静音が全裸で館嶋のいるベッドの傍らに立ったとき、館嶋は硬直した。その発展途上の身体に腰までかかる黒髪を垂らした頭部が乗った時、強烈な色気が生じたのである。もの憂げな瞳が二つ、やや高い鼻が一つ、下唇が少々厚めの口が一つ。それらパーツがバランスよく輪郭に収まっている。そのバランスが平均的な身体に作用していた。所謂”黄金率”というものだ。それが、色気に変換されている。
効果は3回戦目を迎える館嶋のいきり立った肉棒が示していた。
「出すぞ、飲めよ」
静音の頭を館嶋が押えつける。そのような事をしなくても、静音は肉棒から口を放さなかったであろう。館嶋にもそれは解かっていたが、押さえつけずにはいられなかった。
悲鳴のような喘ぎを上げて館嶋が射精した。
「まだ飲むなよ・・・・口を開けるんだ。」
射精を終えた男根から口を放し、顔を上げた静音に館嶋が命令する。
言われたとおり口を静音が口を開ける。唇の端から精液が溢れ、顎で玉を作る。それ程出た。
「いいぜ、飲みな。」
口を閉じ、唇の端を僅かに歪め嚥下する。喉の動き、唇の端から溢れる白濁、霞がかかったような潤んだ瞳がとてつもなくイヤらしい。次をせがんでいるようだ。
「横になって。」
静音が精液でねばついた声で言うと、館嶋はいそいそと従った。
天を仰ぐ驚異的な回復力は、再び肉棒を弄う舌技によるものだろうか。
「はぁ・・・っ」
騎上位で結合した静音の口から声が洩れる。悦の声ではない。肺の中を空気を押し出しただけの声だ。
それでも館嶋は喜び、腰の運動を開始した。シャワーの水音にを肉の打ち合う音が圧倒する。それに混じってジュプジュプと熱い泥から引き抜くような淫音が響く。
------何だ?!喘ぎをかみ殺しつつ腰を使う館嶋は偶然、静音の眼を見た。ベッドの上でしたときは犬のポーズを取らせて一回、ベッドの縁で抱え上げて一回した。声は聞いている、顔も見ている。
が、眼はみていなかった。そして、今初めてみるそれには何の感情も浮かんでいなかった。
「やっぱりヘタね。それに早漏。」
冷え切った声で静音が短く感想を述べた。
 がっ!!淡々と言う口調がなおさら冷酷に響く静音の評価に館嶋は抗議しようとしたが、口から出てきたのは込み上げる空気であった。
静音の右手が館嶋の左胸に乗せられている。さほど力を入れている様子も体重をかけているようにも見えないのに館嶋は圧迫され肺から押し出された空気を吐き出した。急激な逆流に声も出ない。
続いて、左手が右胸に乗せられる。
ごひゅうぅ両方の肺から空気が一気に押し出される。酸素の欠乏に館嶋の視界が真っ赤に染まった。
急速に失われていく視力と地震のような頭痛の中、館嶋が静音の細腕を掴んだ。
その瞬間、生木を折るような音が響く。
館嶋の胸に乗せていた静音の手が手首まで埋まっていた。静音のうでを掴んだ館嶋の手が硬直している。
ごぽっと、大きく開いた館嶋の口から血が溢れ出した。静音の細い手によってへし折られた肋骨が肺に刺さったのだ。
静音が少々身体を傾けた。館嶋の身体が跳ね上がり、口や鼻から凄い勢いで血が噴き出す。最後のダメ押しで骨が心臓にも刺さったようだ。
静音の浮いた腰から、館嶋の男根が抜け出る。精液が糸を引いてそれに習う。心臓潰された時に館嶋は達していたのだ。
血の量が減ってゆき、血泡が口からこぼれ始めた。十秒と持たずに絶命するだろう。
変化はすぐに現れた。バチンッと、最後の痙攣で大の字になった両手から何かが爆ぜる音が鳴った。
館嶋の両腕が膨張し赤黒く変色している。ビクビクと不気味な蠕動を繰り返しながらさらに膨張を繰り返してるのは筋肉であった。その急激な成長に皮膚が爆ぜ割れ、ボロ屑のようにまとわり付いている。
その太さが静音の胴ほどにもなった腕が動いた。静音の両脇から閉じるように。腕の軌道には静音の上半身がある。うまく頭部への直撃は避けられても腹部への衝撃で内臓は列は必至だ。
しかし、突進する牛でも殴り殺せそうなその豪腕は、両脇に突き出した静音の肘で止められていた。そのまま肘を支点に腕を回して館嶋の手首を握る。
力の入っていない自然な動きで手を引いた。気色の良い音と共に館嶋の腕がねじり上げられた。
ムリムリと乾いた音で肘から先がねじ切られる。血はそれ程出ない。先程出尽くしてしまったようだ。
風をきって、館嶋の右膝が跳ねた。騎上位で乗っている以上避ける体勢にはいなかった。膝の軌道は左肩甲骨のやや下、心臓だ。
それも止められた。肩でも叩くように静音が右手を左肩上方に持ってくる。もぎ取った館嶋の腕を握ったまま。膝に突き刺さった腕を放し、静音は体勢をそのままに両手て館嶋の太股の付け根をそれぞれ掴んだ。繊細な指が肉にめり込む。
ごきりっと音がした。もう一度、ごきりっ。次はめりめり。さらに、ぷちぷち、めちめち、おおよそ耳にしたくない音を響かせ館嶋の脚は胴体から分断された。
その瞬間、ピンク色の細い糸が静江の首や腕、上半身に巻き付いた。その糸はねじ切れられた肘から出ていた。筋肉繊維が紐状にほぐれ静音を絡め取ったのだ。
館嶋が身体を起こした。血まみれの口をカッと開く。その瞬間静音の口が尖った。間髪おかずに館嶋が再び床に横たわった。眉間に小さな赤点が出来ている。静音が口に残った館嶋の精液を吐き捨てた。
「こっちも弱いのね」
哀れむような静音の声が湯気に響いた。
それに反発したかのように再び館嶋の上半身が跳ね起きた。今度は乾いた破砕音を伴っている。
館嶋の両脇の下から白いものが生えていた。数は十二対。その内上から5対の先端が砕けている。肋骨であった。それが水牛の角のように飛び出していた。
十二対の白く細い腕が静音を抱きすくめた。館嶋の紅い口が笑いの形に歪む。
それが凍り付いた。背骨の首と鳩尾の部分に激痛が走ったのだ。
「やっぱり弱いわ。」
再び静音は小さく言って、館嶋の背骨に食い込ませた指に力を込める。
彼女の自由を奪っていた筋繊維の紐は肋骨の抱擁で断ち切られていた。
指が付け根まで潜り込み固いモノをつかむ。そして、一気に引き抜く。
静音の細いたおやかな指が白い芋虫のような脊柱が引き摺り出す。館嶋が死の痙攣を迎えながらも静音の頭頂に歯をたてようとしたとき、その指が館嶋の脊椎をバラバラに分断していた。
「ああぁぁぁっ!------」
声を上げたのは他ならぬ静音であった。館嶋の最後の痙攣に合わせ腰を動かす。その顔にはまぎれもない喜悦が浮かんでいた。
殺人淫楽症・・・それが彼女を表現する一番簡単で適切な言葉であろう。
最も今しがた破壊したものが人間であったならだ。
死の臭いが立ち込める浴室でシャワーの水音がとうとうと流れていた。
気だるい昼下がり、人影もまばらな公園の一角に静音はいた。しゃがみこんでいるその足元には小犬がいる。薄汚れた毛並みから野良だと解かる。
その小犬が一心不乱に貪っているのは、週刊誌で「人間様よりいいモノ食べてる」いうタイトルで紹介されたドッグフードであった。
「もぅ、これで最後だからしっかり食べるんだよ。」
静音が語り掛けているのもちろん小犬である。聞いているのか尻尾を高く掲げながら懸命に餌を貪る。呆れたような笑いを浮かばせ、静音の眼が優しく細まる。昨夜、生命の破壊劇を演じた時とは全く違う静音がいた。
静音が立ち上がると小犬も一旦口を止めて静音を見上げる。
「似合う?」
くるりと回った。長い黒髪の間を太陽が透かて輝く。
「今度の学校の制服なの。そこにとっても強いヒトがいるわ。」
まるで、初恋を友人に聞かせるようにやわらかな笑みを浮かべる。
しかし、そこに何を感じたのか小犬は尻尾を丸め一目散に逃げ出してしまった。
取り残された静音の髪を初夏の香りを含んだ風がなぶり、スカートをひらめかす。小犬が走り去った方向を見つめる静音の眼はいつも通りに冷めていた。

抜ける官能小説
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