中間考査の範囲を黒板に書き付けながら、雛村杏子は待っていた。
授業終了のチャイムをである。本来ならば生徒が待ち焦がれる音を教師である杏子が今、クラスの誰よりも待ち望んでいるのだ。
不自然さがない程度になるべくゆっくりと書き続ける。範囲を書きおわってどうしようかと黒板を見つめた時に、待ちかねた終了のチャイムが鳴り響いた。
「それじゃ、テスト範囲をしっかりと復習しておきなさいね。」
杏子は早口に言うとそそくさと、教室を出ていった。
5時限目、本日最後の授業が終わって部活動に急ぐ生徒、帰宅部の生徒が廊下にあふれている。
「先生、さよーならー。」
「はい、さようなら。」
何人かの生徒と言葉を交わしながら、職員室に急ぐ杏子は胸に痛い位の視線を感じていた。
いつもは腹の辺りにある名簿や教科書を両手で胸に押し当てて生徒の中を泳いでいく。授業のあった教室からはさほど離れていない職員室が何故か遠くに感じられた。
「・・・・・・・」
職員室に辿り着き、自分のデスクの前に座ってもそれは杏子に絡み付いていた。視線である。今度は生徒達のそれではなく、大人のものであった。
職員室にいる大人と言えばまず、教師である。その教師達の視線は、小刻みではあるが、生徒と同じ部位、杏子の胸を貫いていた。
杏子は小さな溜め息をつくと、先週の体育の授業を思い出した。
 ------その日の体育は水泳であったが、体育教師がいなかった。顧問を勤める陸上部の地区予選と重なったためである。同じ敷地内ではあるが三つある校舎別にカリキュラムが組まれているため、教師の数は校舎単位で見ると少ないのだ。
それで、杏子と水泳部の顧問をしている沢木美幸が急遽授業を受け持つ事になった。
「大丈夫ですって、大体最初の時間なんて自由だって決まっているんですから。」
なんとか辞退しようとする杏子に美幸が言う。
「そうですよ。それに、お二人の水着姿を見れば生徒達も喜ぶでしょう。」
ニコニコしながら好々爺の面体で言ったのは、その旨を二人に告げに来た校長であった。かなりさばけた人物で、生徒にも人気がある。暇でも持て余しているのか庭木を剪定したり、こうして連絡事項を自ら伝えに来ることが多い。
「でも・・・・」
「だぁか~ら、校長先生も言ってるぢゃないですか。たまには可愛い生徒達にサービスしなくちゃ。そーですよね。」
何か反対の理由をつけようとした杏子を制して美幸が校長に同意を求める。
校長は「ほっほっほっ」と笑っていた。

「雛村先生って巨乳だったんだぁ。ムチムチしてて気持ちよさそうだねぇ。」
そう言いつつ、杏子の胸元を覗き込むのは既に競泳用水着を身につけた美幸である。杏子の二つ年上の美幸が放つ妙なアクセントをつけた親父言葉には邪気がない、妹の発育ぶりに驚く姉といった感がある。
「そ、そんなことないですよ。沢木先生だって凄くスタイルいいじゃないですか。」
外しかけのブラジャーで胸を押えながら杏子が離れ、更衣室の壁に背中を押し付けた。ドキドキと豊かな胸の下で心臓が波打っている。同性とはいえ、ここしばらく身体をじっくり見られた事がない、当然身体の評価をされたこともなかった。「巨乳」「気持ちよさそう」という言葉に心の何処かが反応する。
「そお?ん~むっふっふっ」
美幸が頭の後ろで手を組み、胸を突き出すようにして身体をくねらした。
水泳部の顧問を努めているだけあって引き締まった肢体をしている。特に水着からスラリと伸び出た太ももへのラインが素晴らしい。雑誌でグラビアを飾っているモデルもそこのけの脚線美を醸し出している。
「さぁ~て、センセイもパッパッと着替えてこの巨乳を見せつけにいきましょう~。あれっ?」
ポーズを解き、美幸が両手をワキワキさせながら杏子に迫る。が、既に杏子は着替えを完了していた。
「・・・・ほほぅ。」
またもや美幸が親父臭い声をだす。実際そこにオヤジがいたら同じ様に声を上げていただろう。
まず、胸が凄い。水着の布地を押し上げ、脇からもはみ出ようとする双乳の自己主張ぶりは素晴らしいものがあった。そして胸に引き上げられるかのようなハイレグカットが股間に食い込み、絞られた腰を強調する、後ろに回るとTバックに割られた臀部が鎮座していた。水着によって逆に凹凸がはっきりと出る肢体が醸し出す色気は、美幸が健康的な色気と言うなら、杏子のそれは肉感的であった。色はピンクに違いない。
「こ~んなエッチな身体を隠しとくなんて、雛村センセも人が悪いんだから~」
水泳帽をかぶるため、髪を束ねる杏子の胸を美幸が指で突つく。柔かく、それでいて押し返してくる張り。一級品の手応えだ。
「なっ、止めて下さい。」
髪を束ねる為に、両手は上に上がっている。美幸のおさわりから胸を守るためには身体の向きを変える位しかない。くるりと背を向けると、胸が動きに沿ってプルンと揺れた。
美幸の眼が細くなる。猫の目のようだ。釣り目気味のため、そうすると今までの快活さとは違う妖艶さが出てくる。
人差し指の他に中指も添えて背後から胸を押し上げた。
この指にかかる、ズッシリとした重量感が堪らない。
「止めて下さい!」
やっと髪を束ねおわった杏子が、今度は手の平で触ろうとした美幸の動きを止めた。
「何考えてるんですか。」
「いいじゃない、減るモンでもないし。あ~あ、私ももうちょっと胸ほしいなぁ。」
口を尖らせながらなで下ろす美幸の胸は、”もうちょっと”と欲しがる程なくはなかった。むしろ、かなりある。
それでも杏子のを見ると欲しくなるようだ。
「は、早く行かないと遅れてしまいますよ。」
物欲しそうな美幸の眼に何かを感じて杏子が動いた。
「それじゃ、サービスしに行きますか。」
追いついてきた美幸が杏子の背中を押しながら予鈴が反響する更衣室を後にした。

抜ける官能小説
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