婦人はバッグを取り、中を開いて探りながら、紀子美の方へと戻って行った。
彼女が中から取り出したのは、ポケットティッシュであった。
婦人はバッグを床に置き、そしてティッシュを数枚、袋から取り出した。
「あの……、男の人たち、これはホントに見ないであげて……?」
そう言いながら婦人はティッシュを全て広げて行った。
「あの、皆さん、ホントに見ないであげてね……?」
もう一人の婦人も、加えて男性たちに念を押した。
男性たちは、仕方なく、しぶしぶと窓の外を向いて行った。
すると婦人はティッシュを持って紀子美の前にしゃがみ込み、
「ちょっと御免なさいね?」
と言って、紀子美のスカートに片手をかけた。
「あ……、いいです……。」
紀子美はとっさにスカートを押さえ込み、ティッシュを持った婦人に言った。
「私、じぶ、んで、やります、から……。」
彼女は激しく泣きじゃくりながら、やっとの様子でそう言った。
「そーお?」
婦人はティッシュを持ったまま立ち上がった。
テレビの画面では、紀子美が両手から手袋を外し、一人の婦人に渡す姿が映っていた。(紀子美の手袋は、スカートの股間を押さえていたため、やはり尿で湿ってしまっていたのである。)
紀子美は婦人からティッシュを受け取ると、何やらその場にしゃがみ込んで行った。
婦人たちは窓際に立つ男性たちに何かを指示し始め、男性らはしぶしぶと顔を窓の方に向けて行った。
エレベーター内は、また静まり返っていた。
ヒクヒクと泣きじゃくる紀子美の声。
男性たちはまた、そっと顔だけ振り向いて、紀子美を覗き見た……。
婦人たちの立つ間に、紀子美がしゃがんでいた。
紀子美は彼らに背を向けて、所謂「ウンコ座り」でしゃがんでいた。
ドレスの腰には大きなリボン。
紀子美はティッシュを持った右手をスカートの前にやり、そして上半身を捩りながら、その手をスカートの奥へと入れて行った……。
(凄い姿だ……!)
男性たちの誰もが思った。
「ほら!見ないであげて……!」
婦人の喝が、また飛んだ。
男性らは一斉に、窓の外へと顔を戻した。
紀子美がヒクヒクと泣きじゃくる声が聞こえる。するとその声の合間から、やがて紀子美の股間でティッシュが擦れる音が聞こえた……。
「やだ、ちょー恥ずかしいよ、あんなのー……!」
「サイアク!って感じイ……?」
ヤルタの大スクリーン前では、コギャルたちが映像を見上げ、口々に叫んでいた。
その巨大スクリーンには何と、今「ウンコ座り」で股間を拭く、恥ずかしい紀子美の後ろ姿が映し出されているのだった。
髪の後ろを真っ白なかすみ草で飾ったお嬢様の、何ともあられもない後ろ姿である。
人々は口々にどよめき声をあげながら、驚いてスクリーンを見上げていた。
「おい!ケツ拭いてるよ、お嬢様が……!」
「ケツじゃなくって“マタ”だろう……?」
「おやおや、すごいねコリャ……。」
「やだ、可哀相に……。」
「お嫁行けないよ、あれじゃもう……!」
「ちょーカワイソーだね?あのお嬢様……!」
美しくおめかしをした、清楚なドレス姿のお嬢様は、はしたなくも「ウンコ座り」をして股間の汚れを拭く、その恥ずかしい姿を、日本全国へとテレビ中継されてしまっているのだった……。
エレベーターの中では、紀子美が顔を耳まで赤く染め、泣きながら股間を拭いていた。
その股間からはティッシュの擦れ合う乾いた音が、かすかに男性たちの耳元にまで漏れ聞こえていた。
男性たちは相変わらず、皆顔だけを紀子美に振り向かせ、立っていた。
彼らの顔は上気して、その下半身は密かにズボンの前を膨らませているのだった……。

抜ける官能小説
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