エレベーター内の皆が紀子美を見つめている。
その前で紀子美は、再び右手を手すりへと戻したと思うや、またスカートへとやるような仕草を一旦見せた後、結局やはり手すりへと戻した。
両脚は麦踏みダンスを続けている。
紀子美はもう一度右手をスカートにやったかと思うと、また手すりへと戻し、そうしてその直後、今度は左手を信じ難いところへと持って行った。
何と彼女は、落ち着きのないドサクサの末に、その左手を自らの股間(!)へと持って行ってしまったのである……!
彼女は一瞬のうちに、その広がったスカートを押さえ込み、そしてスカートの上から股間を思い切り握りしめてしまった……。
乗客たちの目は、その光景を見て皆一様にギョッと見開かれた。
目映いばかりにおめかしをした、育ちの良さそうなお嬢様が、何と彼らの目の前で、こともあろうに、その恥ずかしい股間(ばしょ)をスカートの上から握りしめてしまったのである……。
光沢ある生地に艶やかな皺が何本も寄るほど、令嬢は思い切り、その股間を握りしめていた……。
お嬢様はみるみる耳までを赤く染めて行き、恥ずかしそうに男性たちから顔を背けた。
そして彼女は膝を曲げ、腰を落として床に膝を突いて行った……。
「……!」
「……!」
一瞬の間があった後、婦人連れの2人が「大丈夫……!?」と声をかけ、紀子美のそばに駆け寄ってしゃがんだ。
「どうしたの……!?」
「大丈夫……!?」
彼女らは紀子美の肩に手を添えてやり、うつむいた彼女の顔を覗き込むようにして尋ねた。
男性たちはどよめいて紀子美を見下ろしていた。
紀子美は左手で股間を握りしめたまま、顔中を真っ赤に染めて泣き出していた。
彼女は失禁したのではなかった。
ただ、股間を手で押さえていなければ、もうどうにも尿意を我慢できなくなってしまったのである。
右手は手すりにつかまったまま、紀子美は左手でドレスの股間を握りしめ、泣いていた。両膝は床に突き、彼女は太ももをモジモジと摺り合わせつつ、腰をせわしなく上下させていた。
「まあ、どうしたの、お嬢さん……!」
「具合悪いの……?」
婦人連れは紀子美に問い続けた。
紀子美は声をあげて泣きながら、ひたすら股間を押さえてモジモジと腰を動かしていた。
それは、明らかに尿意を堪える人の姿であった……。
「ひょっとして、あなた……、お手洗い、したい……?」
一人の婦人は、紀子美の顔を覗き込みながら、遠慮がちにそう尋ねた。
ついに、図星の言葉が発せられてしまったのであった。紀子美の胸は羞恥に締め付けられた。
「お手洗いか……。」
「オシッコ……?」
「大丈夫か、おい……。」
男性たちは一斉にどよめき出した。
紀子美はその声を聞いて、恥ずかしさに目から一層涙を落とした。
「お手洗い、したいんでしょう?ねえ、お嬢さん……?」
「お手洗いなの……?」
婦人連れは紀子美に対して心配そうに詰問した。
男性たちは皆、紀子美を見下ろしていた。
紀子美は恥ずかしさに胸が張り裂けてしまいそうであったが、しかし、あまりに切迫した状況のため、彼女はやむを得ず婦人たちに頷いてしまう他なかった。
声をあげて泣きながら、紀子美が女性たちに頷く……。
「まあ大変……!」
「やっぱり、そうなのね……!?」
婦人連れは大声をあげた。
男性たちは再びどよめき、口々に様々な言葉を口走った。
「お手洗……」
「トイレ……」
「オシッコしたかった……」
「いつから我慢……」
「大丈夫か……」
「オシッコ……」
「あのお姉さん、便所に……」
恥ずかしい言葉が男性たちの口から次々に発せられた。
紀子美は思わず顔を歪め、激しく嗚咽した。
婦人連れは紀子美の肩に手を添えたまま、「どうしましょう……」と顔を曇らせて途方に暮れていた。
「ねえ、お嬢さん、もう我慢できない……?」
一人の婦人は紀子美の顔を覗き込み、彼女に対して子供にするような質問をした。
紀子美は一層の羞恥を感じつつも、しかし仕方なく、泣きながらハッキリと頷いた。
「ああ、困ったわねえ……。」
「お手洗いなんてないものねえ、ここには……。」
後の言葉を発した婦人は、そう言いながら辺りを見回した。
すると、その時。彼女はドア脇にインターホンを見つけたのであった。
「あ、私、あれで連絡してみようかしら……。」
婦人はそう言って立ち上がるとインターホンのところへ歩み寄り、スイッチを押した……。

抜ける官能小説
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