「ええ、只今入った情報をお知らせいたします……。先ほど、エレベーターに閉じこめられている乗客の方から管理会社のほうへインターホンで連絡が入り、乗客の中に、どうやらお手洗いに行きたくなっている女性がいるとのことです……。この女性は若い女性ということのようですが、エレベーターの故障から長時間が経過しております今、非常に心配な状況です……。」
テレビでは、故障エレベーターの新展開が実況レポートで伝えられた。
新宿ヤルタ前では、人々が立ち止まってスクリーンを見上げ、レポーターの声に耳を傾けていた……。
「んはああっ、んんっ……。」
エレベーターの中では、股間を押さえて膝を突く紀子美が、右手で手すりを握ったまま、辛そうに腰をモジモジと上下させていた。
「大丈夫……?」
「我慢してね……?」
婦人連れは紀子美の肩に手を添えてやり、彼女をしきりに励ましていた。
「んはああっ……!あ、んんっ……。」
紀子美はせわしなく両太ももを摺り合わせ、突き出した屁っぴり腰を上下動させていた。
股間を握る左手には思い切り力がこもっている。
まるでお嬢様にはあるまじき、はしたない姿だ。
しかし、そのあられもない恥ずかしい姿を、紀子美は三人の男性たちから、じっと見下ろされてしまっているのだった……。
「はあああ!んんんっ……!」
紀子美は手すりから右手を離し、スカートを握りしめて腰を浮かせた。
スカートを握る右手には強烈な力がこもり、全身は激しく硬直したように見えた。
「ほら頑張って……!」
「オモラシしちゃ駄目よ……!」
婦人連れは、必死に紀子美を励ました……。
エレベーター故障から1時間以上……。
紀子美の尿意は、いよいよ激しさを増していた……。
「私、もう一度インターホンで連絡してみるわね……?」
一人の婦人は紀子美から離れ、インターホンのボタンを押した。
「はい……。」
今度はすぐさま応答があった。実は先ほど紀子美の尿意を連絡した際、管理会社の配慮から、インターホンが直接、修理現場へと結びつけられていたのであった。
「あの、修理はまだかかるでしょうか?お嬢さん、もう、出ちゃいそうなんですけど……!」
婦人はインターホンに向かって切迫した声で訴えた。インターホンのスピーカーからは、30代前半くらいの男性の声で返答があった。
「実はもうすぐ修理が完了します……。もう少しで動きますから、お待ち下さい……。」
インターホンの返事は朗報と言えた。しかし婦人はあまり信じていない様子だった。
「本当ですか……!?早くしていただかないと、お嬢さん、もう本当にオモラシしちゃいますよ……!?」
婦人は不必要に大きな声を出し、紀子美にとって恥ずかしい言葉をインターホンに叫んだ。
〃お嬢さん、もう本当にオモラシしちゃいますよ……〃
--乗客の男性たちも聞いている前だというのに……!
紀子美は耐え難い恥辱に、また激しく顔を歪め、嗚咽した…… 。
12時50分。
これまで昼の情報番組を細切れに中断し生中継を行って来た某局であったが、今、その画面の下には、予定していた番組の中止を告げるテロップが出た。レポーターもそのことに触れ、説明を行った。
「ええ本日は番組の内容を一部変更いたしまして、この新宿エレベーター故障事故の模様をお知らせして参りましたが、事態が急変いたしました関係から番組を変更し、『サンデー昼ナマ60分』は、ここまでで中止とさせていただきます。申し訳ございませんが、このまま中継を続けさせていただきますので、どうぞ御了承下さい……。」
レポーターが「事態が急変」と言っていたのは、紀子美の尿意のことを指していた。
どんな女性かは分からなかったものの、「若い女性」が尿意を催しているという状況は充分視聴者の「気になる」状況であり、いわゆる「数字の取れる」オイシイ状況なのであった。
局にはエレベーターの中を映せないのかという問い合わせ電話が数多く寄せられており、スタッフの数人は今、エレベーター内を撮影できる場所を探して奔走しているところであった。他局の中にも、1時ちょうどからの中継開始を急きょ決定し、その準備に逐われているところが多かった。
そんな時である。
レポーターのところに新たな情報が飛び込んで来たのだった。
エレベーターの修理が完了し、間もなく動き出すという。
レポーターは直ちに報告を始めた。
「ええ、ここでまた新しい情報が入って参りました!たった今、エレベーターの修理が完了し、間もなくエレベーターが動き出す模様です……!繰り返します……」
画面には、下から見上げたエレベーターの映像が映し出されていた。
ヤルタ前の人々は、皆立ち止まってスクリーンを見上げていた。

抜ける官能小説
inserted by FC2 system